先日、関東から福岡へ遺品整理に来られた方からご連絡をいただき、那珂川市王塚のご実家に遺されたご親族の蔵書の買取に伺いました。

本を所有されていたのは、国語の先生だった方。

ご自宅には、長い時間をかけて集められた本が、壁を埋めるようにびっしりと残されていました。

今回は私の専門分野だけでは対応しきれない量と内容だったため、もう一軒、別の古書店にも声をかけ、二人で蔵書を確認しながら作業を行いました。

古書の買取というと、「専門書や美術書でなければいけない」「古い文庫本は値段がつかない」と思われることもあります。

けれど、必ずしもそうではありません。

文庫本も買取しています

今回、ヘルベチカで主に買い取らせていただいたのは文庫本でした。

近年は新刊文庫でも一冊1,000円を超えるものが珍しくなくなり、それに伴って、古書として流通する文庫本についても以前とは相場が変わってきています。

もちろん、すべての文庫本に値段がつくわけではありません。

タイトル、著者、版、状態、現在の需要などによって判断は変わりますが、ヘルベチカでは文庫本も一冊ずつ内容を見ながら買取を行っています。

蔵書には、その人が何を考えてきたのかが残る

今回の蔵書で印象に残ったのは、本の量だけではありませんでした。

長く国語を教えてこられた方だったこともあり、一冊一冊がばらばらに集められたというより、蔵書全体に一本の柱のようなものが通っていました。

戦争、社会、文学、思想。

戦前・戦後という時代を生きた世代として、戦争に対する強い問題意識を持ちながら、長い年月をかけて本を読み続けてこられたことが、残された本から伝わってきます。

ページにはたくさんの付箋が貼られ、ところどころに書き込みもありました。

それは商品として考えれば「使用感」ですが、蔵書として見れば、その人が実際に本を読み、考えてきた痕跡でもあります。

書き込みのある本でも、すべて処分する必要はありません

「書き込みがあるから売れないだろう」

そう判断して、処分してしまう方も少なくありません。

実際には、書き込みの程度や本の内容によっては、買取できるものがあります。

今回は事務所へ持ち帰ったあと、一冊ずつ書き込みを確認し、残された付箋を剥がしながら仕分けを進めています。

ヘルベチカで扱うもの。

別の古書店や業者間市場へつなぐもの。

そして、秋の即売会へ持っていくもの。

すべてを同じ場所で販売するのではなく、その本に適した行き先を考えながら分けていきます。

大量の蔵書や、専門外の本が混ざっていてもご相談ください

今回のように、一軒の家に大量の本が残されている場合、すべてが一つの古書店の専門分野に収まることはむしろ少ないものです。

文学、美術、歴史、思想、専門書、文庫、新書、雑誌。

さまざまな分野が混在していても構いません。

必要であれば、今回のように別の古書店と連携して対応することもあります。

「何が価値のある本なのか分からない」
「書き込みや付箋がある」
「量が多く、自分たちでは整理できない」
「遠方に住んでいて、福岡の実家を片付けなければならない」

そうした状態のまま、ご相談いただいて大丈夫です。

こちらで本を見ながら、残すもの、次へ渡せるもの、そのほかの方法が適しているものを判断していきます。

誰かが長い年月をかけて集め、読み続けてきた本。

すべてに金銭的な価値が残るわけではありません。

それでも、次の読み手へ渡せるものまで、まとめて粗末に扱う必要はないと考えています。

一冊ずつ確認し、行き先を考える。

今回那珂川市王塚でお預かりした蔵書についても、その人が長い時間をかけて読んできた本を、できる限り次の人へ渡せるよう、仕分けを続けています。

大西 健
古書店「ヘルベチカ」店主。

福岡を拠点に
建築・デザイン・写真・美術など
視覚文化に関わる古書 を扱っています。

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