昨日、福岡県粕屋郡須恵町へ、映画パンフレットや展覧会図録、美術書などの出張買取に伺いました。
長く手元に置かれてきた本を拝見しながら、一冊ずつ内容や状態を確認し、査定させていただきました。
今回は査定だけでなく、どのような経緯で私どもを見つけ、買取をご依頼くださったのかについてもお話を聞かせていただきました。
数ある古書店のなかから、何を見て、何を感じて声をかけてくださったのか。
実際に依頼してくださった方から直接お聞きできる機会は、私にとっても貴重なものです。
本を見ることと、その本を残してきた人を見ること
今回の訪問では、私の不手際もありました。
車の鍵を車内に閉じ込めてしまい、事情をお話しして電話までお借りすることになりました。
鍵の解除を待つあいだも嫌な顔ひとつされず、冷房の効いた部屋で待たせていただきました。
本来であれば、私が本を査定し、お客様から本をお譲りいただくために伺った時間です。
それにもかかわらず、逆にこちらが助けていただくことになりました。
その時間のなかで改めて考えたのは、古書の買取という仕事は、本の価格だけを見ていればよい仕事ではないということでした。
どのようにその方と接するのか。
どのように話を聞くのか。
そして、その方が長く残してきたものに、こちらがどう向き合うのか。
お譲りいただいた蔵書はもちろんですが、今回いただいた時間や経験も、私にとって大切なものになりました。
美術書を通して、その人が歩いてきた場所が見える
福岡で美術書や展覧会図録を査定していると、ひとつ気づくことがあります。
美術館や展覧会へ足を運ぶことが好きな方は、福岡だけにとどまらず、東京や関西、さらに遠方まで出かけていることが少なくありません。
また、仕事などで各地に暮らし、その土地で展覧会を訪れ、本や図録を少しずつ集めてきたという方もいらっしゃいます。
そのため、一冊の図録を見ていると、
「これはどこで手に入れられたのだろう」
と思うことがあります。
展覧会図録や映画のパンフレットは、単に情報が印刷された冊子ではありません。
その場所へ出かけたこと、その作品を見たこと、そして手元に残しておこうと思ったこと。
一冊ごとに、その人が過ごしてきた時間の一部が残っています。
だからこそ、市場価格だけでは判断しきれないものもあります。
お譲りいただいた本は、次の場所へ
今回お譲りいただいた映画パンフレットや美術書、展覧会図録の一部は、10月末に参加予定の浄運寺さんでの即売会でもご紹介できればと考えています。
手元に置いてくださっていた方から、次に必要としてくださる方へ。
すべてを残すことはできませんが、私どもの目で一冊ずつ見ながら、次へ渡す価値があると判断したものを選び、紹介していきます。
買取は、そこで終わりではありません。
お預かりしたものをどう扱い、どこへつないでいくのか。
そこまで含めて、古書を扱う仕事だと考えています。
福岡で美術書・図録・映画パンフレットの整理をお考えの方へ
「これは古本屋に相談するようなものだろうか」
そう迷われるものでも、まずはご相談ください。
美術書、展覧会図録、写真集、建築・デザイン関係の書籍、映画パンフレットなど、一般的な古書とは少し異なるものについても、一点ずつ内容を確認して査定しています。
価値が分からないものを、あらかじめご自身で選別していただく必要もありません。
本棚に残っているものを拝見し、そのなかから私どもで判断します。
福岡市内をはじめ、糟屋郡やその周辺地域にも出張しています。
本を手放すことがまだ決まっていなくても構いません。
「こういうものがあるのですが、見てもらえますか」
そのくらいの段階から、お問い合わせいただければと思います。
今回、須恵町でお譲りいただいた皆様には、蔵書だけでなく、貴重な時間までいただきました。
改めて、ありがとうございました。
大西 健
古書店「ヘルベチカ」店主。
福岡を拠点に
建築・デザイン・写真・美術など
視覚文化に関わる古書 を扱っています。


