福岡県直方市感田にて、美術書と展覧会図録の出張買取に伺いました。
当初は、ルーヴル美術館関連の全集や美術全集についてご相談をいただきました。
本の画像をお送りいただくことが難しいとのことでしたが、ちょうど同じエリアへ出張買取に伺う予定がありました。お時間を合わせていただき、直接、蔵書を拝見させていただきました。
ご自宅には、お母様が長い時間をかけて集めてこられた美術書が残されていました。
岩崎ちひろの画集や展覧会図録をはじめ、各地の美術館で開催された展覧会の図録が並んでいました。お話を伺うと、お母様は遠く京都まで展覧会へ出かけられ、会場で図録を求めて持ち帰られていたそうです。
展覧会で作品を見て、その時間を一冊の本として持ち帰る。
図録には、そのとき見た作品だけでなく、展覧会場の空気や、心を動かされた記憶まで残っていくように思います。
美術全集について、正直にお伝えしたこと
今回、まずご相談いただいたのは美術全集でした。
かつては一冊数万円で販売されていた全集でも、現在は十分な需要がなく、古書として次の買い手を見つけることが難しいものがあります。
美術全集という形でまとまっていても、内容、刊行時期、状態、作家や収録作品、いま求められている資料かどうかによって、扱いは大きく異なります。
そのため、すべてをお引き取りできるわけではありません。
お客様にとって大切に保管されてきた本だからこそ、期待を持たせたままお預かりするのではなく、現在の流通状況と、当店で取り扱いができる範囲を率直にお伝えしました。
結果として、美術全集についてはお引き取りを見送ることになりました。
古書の査定では、「古い」「定価が高かった」「全集として揃っている」ということだけで価値が決まるわけではありません。
一方で、そのなかに含まれる展覧会図録、作家の画集、専門性のある資料には、現在も必要とする方がいる場合があります。
図録には、次の読者へ渡すべき価値がある
今回お譲りいただいた岩崎ちひろの画集や展覧会図録は、積極的にお譲りいただきました。
展覧会図録は、美術館で開かれた展覧会の記録です。
作品図版だけでなく、作家についての解説、研究者による論考、制作年や所蔵先などの情報がまとめられています。会期が終わると入手が難しくなるものも多く、後から同じ内容に出会えるとは限りません。
研究者や学生にとっては、制作や研究のための一次資料になります。
また、美術を愛する方にとっては、展覧会へ足を運んだ時間をもう一度たどり直せる一冊でもあります。頁を開くことで、当時の展示や作品と向き合った感覚を、自宅でゆっくり味わうことができます。
冊数が多く、書店で見かける機会が少ない図録でも、内容によっては次の方にとって必要な本になります。
一見すると価値が分かりにくい本のなかにも、必要とする方へ届けるべき資料が残されていることがあります。
写真を送れない場合も、お電話でご相談ください
蔵書整理をご検討される際、「本の写真を送るのが難しい」「パソコンやスマートフォンの操作に不慣れで、どう相談すればよいか分からない」と感じる方もいらっしゃると思います。
その場合も、まずはお電話でお聞かせください。
本のジャンル、冊数、おおよその刊行時期、画集や図録があるかどうかなど、分かる範囲でお伝えいただければ、出張で拝見できる内容か、事前にある程度お答えできます。
すべてを正確にご説明いただく必要はありません。
「美術館で買った図録が多い」
「画家の作品集がある」
「昔購入した全集が本棚に残っている」
その程度の情報からでも、まずはご相談ください。
大切に集められてきた本を、次に必要とする方へ
お母様が展覧会へ出かけ、その都度持ち帰られた図録や画集。
そこには、本を集めた記録だけではなく、美術に触れながら過ごしてこられた時間が残されています。
お譲りいただいた本は、一冊ずつ内容と状態を確認し、次に必要とする研究者、収集家、美術を愛する方へつないでまいります。
このたびは、大切な蔵書をお任せいただき、誠にありがとうございました。
大西 健
古書店「ヘルベチカ」店主。
福岡を拠点に
建築・デザイン・写真・美術など
視覚文化に関わる古書 を扱っています。


