久留米市でデザイン書・美術書を出張買取しました
メールでお問い合わせをいただき、久留米市へ出張買取に伺いました。
お譲りいただいたのは、デザイン、美術、建築、海外文学などの書籍です。冊数だけを見れば、大量の蔵書整理というわけではありません。
それでも訪問を決めたのは、最初のメールからやり取りが非常に丁寧で、書籍をどのように手放したいのかが明確に伝わってきたためです。メールを重ねるごとに、長く大切にしてきた本を、できれば適切な形で次へ渡したい、という意向が感じられました。
買取できる本と、価格をつけにくい本
お問い合わせの段階で書籍の内容や写真を確認し、買取価格をつけられるものと、現在の市場では価格をつけることが難しいものについてお伝えしました。
古書の価格は、発行当時の定価や本の厚さだけで決まるものではありません。現在の需要、流通量、刊行年代、専門性、状態、再販売までに必要な作業などを確認したうえで判断します。そのため、きれいな本であっても、市場での需要が少ない場合には価格をつけにくいことがあります。
今回はその点をご理解いただいたうえで、
「価格のつかないものも、可能であれば一緒に引き取ってほしい」
「できれば訪問で買取をお願いしたい」
とのご希望をいただき、日程を調整して久留米市のご自宅へ伺うことになりました。
一冊を見れば、これまでの扱われ方が分かる
実際に書籍を拝見して最初に感じたのは、どの本も非常にきれいに保管されていることでした。
本の状態には、これまでどのように扱われてきたかが表れます。表紙の擦れや汚れ、ページの折れ、書き込みの有無だけではありません。本棚での収まり方や、取り出すときの扱い方にも、その方が物をどう見てきたのかが表れます。
今回の書籍は、長く所有されてきたものでありながら、乱雑に扱われた形跡がほとんどありませんでした。大切にするものを選び、選んだものを丁寧に扱う。その姿勢が、一冊ごとの状態から伝わってきました。
清掃をせず、そのまま掲載作業へ
通常、市場などで仕入れた古書は、状態を確認したうえで、表紙や小口、函などを入念に清掃します。埃を落とし、汚れを確認し、必要に応じて時間をかけて手入れをしてから、撮影と掲載の作業に入ります。
しかし今回お譲りいただいた本は、ほとんど手を加える必要がありませんでした。持ち帰った後、そのまま撮影と登録の作業に入ることができています。古書として流通する前に、ここまできれいな状態で保たれている本は、決して多くありません。
査定額とは別の部分で、これまで丁寧に守られてきた時間そのものが感じられる蔵書でした。
紙の本から、デジタル版へ
今回、一部の本を手放す理由として伺ったのが、同じ内容のデジタル版を購入されたことでした。内容は手元に残しながら、物としての本は整理する。紙の本を所有し続けることを前提とした従来の蔵書整理とは、少し異なる選択です。
物を集め、残す側に立つことの多い仕事ですが、紙の本は手放して内容だけをデジタルで持つという考え方は、今後さらに一般的になっていくのかもしれません。
大切なのは、紙とデジタルのどちらが優れているかを決めることではなく、その人の暮らしや読み方に合わせて、内容を残す方法を選べることだと考えています。
本を手放すことは、捨てることではない
今回のご依頼で印象に残ったのが、
「次の方へつないでください」
という言葉でした。
自分の手元では役割を終えた本を、その内容を必要としている別の方へ渡す。そこには、単なる処分とは異なる判断があります。
古書店の仕事は、本を買い取り、販売することだけではありません。ある方の本棚から、次の方の本棚へ移るまでの間をつなぐ仕事でもあります。
とくに専門書や美術書、デザイン書、展覧会図録などは、必要としている方の数が多いとは限りません。一方で、探している方にとっては、代わりの見つからない一冊になることがあります。その本が持つ内容や背景を確認し、適切な場所へ戻していくことが、私の役割だと考えています。
なお出張買取では、冊数や内容、訪問場所、移動時間などを総合して伺うかどうかを判断しているため、すべてのご依頼に訪問できるわけではありません。ただし、冊数が少ないという理由だけでお断りするわけでもありません。今回は事前に内容が確認でき、手放される本に対する考え方が明確だったことから、直接伺って受け取りたいと判断しました。
お譲りいただいた本は、順次ご紹介します
お譲りいただいた書籍は、すでに撮影と掲載の作業を進めています。一冊ずつ内容を確認し、状態を記録したうえで、必要としている方に届くよう紹介してまいります。
本を手放された方にとっては、ここで一区切りです。私にとっては、そこから次の方へつなぐ仕事が始まります。
このたびは、大切な書籍をお譲りいただき、ありがとうございました。
大西 健
古書店「ヘルベチカ」店主。
福岡を拠点に
建築・デザイン・写真・美術など
視覚文化に関わる古書 を扱っています。


