福岡市博多区の企業様よりご相談
先日、福岡市博多区の企業様より、建築・構造関連の専門書についてご相談をいただきました。
私は建築分野の本が好きなのですが、その中でも特に構造に関する書籍には強い関心があります。
そのため、ご相談をいただいた時はどのような蔵書と出会えるのか、とても楽しみにしていました。
現在は評価が難しくなった専門書も多くありました
実際に拝見すると、長年にわたって集められた構造関係の資料や専門書が数多く並んでいました。
ただ、専門性の高い分野ではあるものの、現在の市場では需要が限られているものも多く、すべてにお値段をお付けすることはできませんでした。
最終的に買取させていただいたのは数冊でしたが、一冊ずつ確認しながら、現在の市場で評価できるものだけを査定させていただきました。
構造の専門書が評価されにくい理由
構造設計に関する専門書は、建築分野の中でも特に評価が難しいジャンルのひとつです。
理由のひとつは、法規や基準が改正されることです。
建築基準法や関連規定は時代とともに見直されるため、当時は実務の最前線だった書籍でも、現在では参考資料としての役割が中心になることがあります。
また、技術書は新版の発行によって内容が更新されるため、古い版は市場で求められにくくなる傾向があります。
建築家の作品集や建築写真集のように、美術的・文化的な価値が長く残る書籍とは異なり、構造の専門書は実用性によって評価が左右されやすい分野でもあります。
そのため、蔵書として大切に保管されていた本であっても、現在の市場ではお値段をお付けすることが難しい場合があります。
ただし例外もあります。
著名な建築家や歴史的な建築作品に関する構造資料、設計資料、研究資料などは現在でも高く評価されることがあります。
建築を意匠だけでなく構造の視点から研究する方は多く、そうした資料は一度失われると再び入手することが難しいためです。
実務書としての役割を終えた後も、建築史や設計思想を読み解く資料として価値を持ち続けるものがあります。
構造の本はすべてが評価されにくいのではなく、「実務資料として消費される本」と「研究資料として残る本」の差が大きいジャンルだと感じています。
「買い取れるものだけで大丈夫です」
査定結果をお伝えする際、
「申し訳ありません。お値段をお付けできるのはこれだけになってしまいます」
と正直にお話ししました。
すると担当者の方は笑顔で
「そうですよね」
と穏やかに受け止めてくださいました。
買取の現場では、ときに厳しいお言葉をいただくこともあります。
実際に今年は、
「良いものしか持っていかない」
と言われたこともありました。
もちろん、そのお気持ちも理解できます。
だからこそ今回のように、査定結果を率直にお伝えしたうえで温かく接していただけたことが、とても印象に残っています。
買取は本だけではなく、人との出会いでもあります
古書の買取は、本を買い取る仕事です。
しかし実際には、それ以上に人との出会いの仕事でもあると感じています。
今回も買取金額そのものより、
「この方たちなら、また何かあった時に相談したい」
と思っていただけること。
そして私自身も、
「誰かが建築の本を探していたら紹介したい」
と思える出会いだったことの方が印象に残りました。
本を通じて生まれるご縁を、これからも大切にしていきたいと思います。
建築書・構造関連書籍の買取について
ヘルベチカでは、
- 建築史
- 建築家作品集
- 構造設計
- 都市計画
- インテリアデザイン
- 建築雑誌バックナンバー
などの専門書を取り扱っています。
蔵書整理や事務所移転などでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
大西 健
古書店「ヘルベチカ」店主。
福岡を拠点に
建築・デザイン・写真・美術など
視覚文化に関わる古書 を扱っています。


